456 キスシーンを入れないで

撮るなら、ちゃんと、一心不乱に。

「高木監督が頼んでくるなら、どんなことでも手伝わないといけませんよね。ただ、私は高木監督の作品に一度しか出演したことがないし、演技の勉強を始めたばかりで、まだ足りないところがたくさんあります。頑張りますので、どうかご容赦ください。」

「謙虚すぎるよ。『貪狼作戦』を見たけど、君の演技は素晴らしかった。橘水東との共演シーンでも全く引けを取らなかったよ。」

「木村成真のことか?」神崎卓礼が尋ねた。

道乃漫は神崎卓礼に頷いた。

神崎卓礼は言った。「彼と少し話したい。」

道乃漫は仕方なく木村成真に言った。「木村監督、あの...私の彼氏があなたと話したいそうです。」

木村成真は一瞬驚いたが、すぐに笑った。「神崎若様ですね。」

高木武一は木村成真が非常に真面目な人間であることを知っていた。特に撮影中は絶対的な短気で、誰であろうと容赦なく叱りつけるタイプだった。