460 心に刺さった

「道乃琪はギャラの増額を要求してきたけど、あなたは彼女にどう返事したの?」道乃漫は木村成真に尋ねた。

「はっきりとは答えなかったよ。考えさせてほしいと言って、数日後に返事すると伝えた」実は木村成真も悪だくみをしていたのだ。「これは自分の逃げ道を作っているわけじゃないよ。道乃琪がギャラの増額を要求した時点で、もう彼女を使うつもりはなかったんだ。ふふ、彼女に50万のギャラを渡したら、彼女は欲しくないって言うんだろ?なら50円すらあげないよ!」

実際、道乃漫も道乃琪が何を考えているのか理解できなかった。

彼女のキャリアが絶頂期だったなら、50万を見下して、自分の価値に見合わないと思うのも仕方ないだろう。

今や彼女の評判はこんなにも悪くなっているのに、最も重要なのは急いでいくつかの作品に出演し、話題性を高め、観客に忘れられないようにすることだ。ギャラなどは二の次のはずだ。

立派なお金持ちの子女なのだから、そもそもお金に困っていないはず。こんな重要な時期に、わずかなギャラにこだわる意味があるのだろうか?

ただ、道乃琪が本当に道乃漫の考えるような人物なら、彼女は愚かではないということになる。

愚かでない道乃琪なんて、道乃琪と言えるのだろうか?

道乃漫は首を振り、木村成真に言った:「そうであれば対処は簡単よ。あなたが数日間彼女に連絡しなければ、道乃琪はきっと焦るわ。彼女から連絡がなければ、放っておけばいい。でももし彼女から連絡があったら、すでに代役を見つけたとは言わないで、ただ彼女のギャラ増額に同意して、今契約書を作り直しているところだから、もう数日待ってほしいと伝えて。そう言う時は、語気を渋々としたものにして、歯を食いしばるように同意したという感じで。もし撮影を急いでいなくて、時間がなければ、絶対に同意しなかったということを強調して。そうすればするほど、彼女はあなたを信じ、得意になるわ。人は得意になると、愚かな行動をとりやすくなるものよ。」

木村成真:「……」

高木武一:「……」

二人の年齢を合わせれば道乃漫の4倍以上になるのに、人を陰で立ち回る術においては、一人の少女にも及ばないとは。

「よし、君の言う通りにしよう!」木村成真は拳を握りしめ、道乃琪を完膚なきまでに叩きのめす準備ができていた。