第035章 娘自慢の狂人

やっと木下おじいさんに会える機会を得て、やっと木下おじいさんが自分に笑顔を向けてくれた。人に好かれる橋本絵里子は得意げになろうとしたところで、表情が凍りついた。返事をしようとした「うん」という声が喉に詰まってしまい、出るでもなく引っ込むでもなかった。

なぜ木下おじいさんは最初から奈奈の名前を呼んだのだろう?

奈奈はいつも口下手で、自分のように人に好かれたことなどなかったのに、木下おじいさんがどうして自分を奈奈と間違えるはずがあるのだろう?

橋本絵里子の声が詰まって、濁った声を出してしまったため、木下おじいさんは橋本絵里子が認めたと思い込んでしまった。

この子が確かに自分の探している子だと分かり、木下おじいさんの笑顔はさらに優しくなった。「奈奈さん、あなたは本当に良い娘を育てましたね。まさに我々軍人の娘らしく、正義感に溢れています。」