第034章 あなたは奈奈でしょう

「お金を取ったんでしょう?」橋本東祐は伊藤佳代とくだらない話はせず、家のお金は全て伊藤佳代に任せていた。どうせ伊藤佳代は浪費家の妻ではなく、お金を一つ一つ貯金していたのだから。

橋本東祐は家事を管理していないからといって、何も知らないわけではなかった。

鍵を取り出し、橋本東祐は部屋に戻って引き出しを開け、引き出しごと取り出すと、そこに隠れていた通帳が見えた。

「橋本さん、あなた何をするの?」伊藤佳代は後ろめたさを感じ、橋本東祐が通帳の中に一銭もないことを見るのが怖くて、奪おうとした。

橋本東祐は180センチを超える大男で、彼が許さなければ、伊藤佳代が彼の手からものを奪うことなどできるはずがなかった。

橋本東祐は通帳を開いて見ると、目が一瞬で赤くなった:「お金はどこにいった?!」

橋本東祐の虎のような怒鳴り声に、外で何をすべきか分からずにいた橋本絵里子は顔が真っ青になった。

もうダメだ、このことは隠しきれなかった。

「奈奈、一体どういうつもり?あれは私たちのお母さんよ、どうしてお母さんを陥れるの!」橋本絵里子は橋本奈奈の鼻先を指さして怒鳴った。

橋本奈奈がいなければ、お父さんとお母さんは喧嘩なんてしなかったはず。普段はお父さんがお母さんの言うことをよく聞いていたのに。

もしお父さんが、あのお金が全部自分のために使われたことを知ったら、お父さんは自分のことをどう思うだろう?

「そうよ、これは私のお母さん。あなたのために家の貯金を全部使って、いい高校に行かせようとして、私には働きながら学校に行けって。本当にいいお母さんね!」橋本奈奈は皮肉っぽく笑った。

「どうしてあなたが知ってるの...あなた、さっきはわざとだったのね!」これは全て橋本奈奈が仕掛けた罠で、私とお母さんを陥れようとしているのだ!

「人に知られたくないなら、そもそもやらなければいい。私たちの学校の先生は誰もあなたの成績を知らないわけがないし、みんな教育界のことをよく知ってる。あなたが付属高校に行くなんて、学校の先生たちはどう思うと思う?」

橋本絵里子は足を踏み鳴らし、中学校の先生たちは本当におしゃべりだと思った。

これは橋本家の問題で、他人には関係ないのに、どうして橋本奈奈の前でこんなことを話す必要があったのか。