第053章 あなたが奈奈さんですか

「奈奈、さっきの言葉は自分で言ったんだからね。人は約束を守らなければいけないわ。もし成績が悪くて付属高校に入りたいと思っても、絵里子の件を持ち出さないでよ」

「お母さん、安心して。約束は守ります」

「橋本さん、奈奈の言葉も聞いたでしょう。だから、お金のために無理して働いて、体を壊さないでください。絵里子は今成績が上がってきて、これから大学にも行くし、お金のかかるところがたくさんあります。体は革命の本、お金を稼ぐのは焦らないで」

伊藤佳代は、橋本東祐が二人の娘の教育費のため、そして奈奈が絵里子と同じような状況になるのを防ぐために、外で副業をして貯金しようとするのではないかと心配していた。

伊藤佳代から見れば、橋本東祐が今から貯金しても無駄だった。

何年も貯めたお金でも、木下おじさんの助けがあってやっと絵里子を付属高校に入れることができたのだ。

橋本さんが今から副業を始めても、一年で十数年分のお金を稼げるわけがない。

不可能だ!

長女は伊藤佳代の実の娘で、可愛がっている。

橋本東祐は伊藤佳代の夫で、彼女は心配でならない。橋本東祐が働きすぎて体を壊すのが怖かった。

この家で、奈奈だけが伊藤佳代にとって他人のようで、いつも警戒していた。

「奈奈、本当に決めたの?」橋本東祐は末っ子の思いやりに喜んでいいのか、申し訳なく思うべきか分からなかった。

彼はいつも二人の娘を平等に扱い、同じように愛していると言っていた。

家族が絵里子のために五千元を使って付属高校に入れたのに、なぜ末っ子は例外なのか?

しかし、二度目の五千元を負担するとなると、橋本東祐は自分にその能力がないことを知っていた。命を懸けても短期間で五千元を稼ぐことは不可能だった。

橋本東祐は考えれば考えるほど複雑な気持ちになり、末っ子の前で胸を張れなかった。

「決めました。私の中学校の成績を見ていてください。私が言った通り、成績に見合った学校に行きます。後悔はしません」この人生で、学校に行けるだけでもいい。他のことは、望みすぎないようにしよう。絵里子と同じ待遇を求めることなんてできない。

両親が絵里子を贔屓しても構わない。彼女は自分を大切にし、もっと自分を愛そうと思った。