「その通りね」橋本東祐は呆れながらも笑みを浮かべた。家の金を全部使い果たしたとはいえ、先生が長女の勉強を見てくれるなら、喜ばない理由はない。
子供の将来はいくらお金があっても買えないもの。今回の出費は本当に正解だったのかもしれない。
「絵里子は良い子だけど、奈奈だって素晴らしいわ。私の二人の娘は両方とも良い子よ。絵里子、驕らないように、このまま頑張り続けるのよ」橋本東祐は伊藤佳代とは違って、橋本絵里子を褒めながら橋本奈奈を貶めたりはしなかった。
しかし、橋本絵里子がこれほど進歩したと聞いて、橋本東祐は本当に嬉しくて、えくぼが出そうなほど笑顔を浮かべていた。
「お父さん、安心して。私は必ず頑張って成績を落とさないようにして、もっと上を目指すわ」両親から同時に認められ、特に学業の面で認められたことで。
この雰囲気があまりにも良すぎて、橋本絵里子は自分のクラスでの8位という成績が実際にどうやって取れたのか、付属高校全体での順位がどれほど悪いのかを、すっかり忘れそうになっていた。
自信に満ち溢れた橋本絵里子は背筋を伸ばした。やはりこの世の中で、自分が望むことなら何でもできるのだと。
橋本奈奈が手伝ってくれなくたって構わない。ダンサーのドレスだって買えたし、パフォーマンスも成功したし、8位だって取れたのだから。
「そうよ、絵里子の成績はもっと上がるわ。奈奈のことだけど、母親として言いにくいことだけど。中学で良い成績を取れたところで大したことないわ。高校入試で良い点数を取れて、付属高校に入れるかどうかが問題よ。家の状況は彼女も分かっているでしょう。付属高校に入りたければ自分の実力で入るしかないわ。私たちは彼女一人のために家全体を潰すわけにはいかないもの。勉強させることには反対しないけど、家に借金があってはダメ。高校に入ってからの成績のことは、彼女の問題だから私は関知しないわ」
伊藤佳代は橋本奈奈の将来を悲観的に語り、中学での良い成績なんて大したことない、橋本絵里子の高校での成績の方がよっぽど珍しいという態度だった。
今や家族全員が知っている。彼女が家の貯金を使い果たして、長女を付属高校に入れたことを。