第071章 作文コンクール

「行きなさい」橋本東祐は笑顔で橋本奈奈を見つめ、とても優しい態度で接していた。

この父の態度に、もともと不機嫌だった橋本絵里子は口を尖らせた。

彼女にだってわかっている。奈奈が白洲隆の家庭教師をしているから、父は奈奈を見る目が日に日に誇らしげになっているのだ。それは奈奈が白洲隆の家庭教師をして、父が木下おじいさんへの恩返しができるからではないか?

自分だって、できるはずなのに。

「お父さん、私のペンがなくなったから、奈奈の部屋から一本借りてくるわ」

毎月のお小遣いが減らされ、前回のダンス衣装の一件以来、橋本絵里子は以前ほど浪費しなくなり、新品ばかり使うのをやめ、ペンなども予備を持つようになった。

今では可能な限り、買わなくて済むものは買わないようにしていた。

そういうわけで、ペンがなくなったら、奈奈の部屋から一本借りることにした。借りるといっても、橋本絵里子が返すはずもない。