第040章 お前がやったのか

本来なら橋本東祐は、伊藤佳代がどんなに悪くても、奈奈の「伊藤佳代に産んでもらいたくなかった」という言葉は、確かに酷すぎる、非情すぎると思っていた。

しかし奈奈の話を聞いているうちに、橋本東祐は口に接着剤を塗られたかのように、口を開くことも伊藤佳代を弁護することもできなくなった。

奈奈が熱を出して病気になった件は、まだ二ヶ月も経っていない。

あの時、奈奈が生ゴミ箱から明らかに期限切れではない解熱剤を見つけ出した様子を、橋本東祐はまだ覚えている。

その日、妻は末娘に解熱剤を飲ませたと言い張り、その後で薬がなくなった、期限切れだった、捨てたと言った。

妻は本当に末娘に解熱剤を飲ませたのか?

解熱剤は本当になくなったのか?

それとも解熱剤は本当に期限切れだったのか?

いいえ、すべて違う。