第044章 いい策と梯子を越える

金の話をすれば感情を傷つけ、感情の話をすれば金を傷つけるとよく言われる。

彼女と橋本絵里子の間にはもう何の感情もない。この人生で、彼女のものである金は、一銭たりとも橋本絵里子には渡さないつもりだ。

「どうしてないの?お金がなければ、どうやって古本を買ったの。奈奈、私たちは実の姉妹じゃない。お金があるのに手元に置いたまま、私に貸してくれないなんて、冷たすぎるんじゃない?」橋本絵里子は声を柔らかくして言った。「奈奈、今回は本当に急いでいるの!ただ借りるだけよ、必ず返すから。」

「言ったでしょう、お金はないって。そのお金はもう全部使っちゃったわ。」橋本奈奈は頑なに金がないと言い張った。「それに、何にお金が必要なの?どうしてそんなにお金に困ってるの。正当な理由があるなら、お父さんお母さんに言えばいいじゃない。お父さんお母さんは誰かを疎かにするとしても、あなたを疎かにすることはないでしょう。」

最後の言葉には、皮肉な色が橋本奈奈の目に浮かんだ。

橋本絵里子は家の長女で、幼い頃から素直で可愛らしく、口も上手かった。

橋本奈奈は知っていた。実は父は橋本絵里子をとても気に入っていて、息子がいないため、父は橋本絵里子に婿養子を取らせることも考えていた。

残念なことに、橋本絵里子は彼女から田中勇を奪い、田中家の条件では婿養子になることなど到底できなかった。

橋本絵里子は田中勇の子を妊娠し、母も騒ぎ立て、父は最後には仕方なく田中勇との結婚を認めざるを得なかった。

そのため、父は婿養子を取る考えを、彼女に向けるようになった。

母は橋本家の全てを彼女に与えるなんて耐えられず、残すとしても橋本絵里子の子供に残すつもりだった。

父にそんな考えがあることを知って、伊藤佳代は彼女を常に監視し、彼氏を作ることも結婚することも許さなかった。

今のように、橋本絵里子がこれほど多くの過ちを犯し、何度も彼女を陥れたにもかかわらず、父は結局橋本絵里子を許し、家での待遇もほとんど変わらなかった。

橋本奈奈はため息をつき、もういい、こんなことは考えないようにしよう。どうせ本が読めて、自分の利益が損なわれなければそれでいい。

他のことは、母と橋本絵里子に好きにさせておこう。