第075章 衝突が起きそう(特別長編)

橋本奈奈は深呼吸をして、手を挙げた。

「何かありますか?」試験監督の先生が橋本奈奈の側に来た。

「先生、用意した三本のペンが全部壊れてしまって、字が書けません。ペンを一本お借りできませんか?」

「それは...」先生は困った様子で「私は赤ペンしか持っていません。誰か余分なペンを貸してあげられる人はいませんか?」

試験監督の先生の質問に対して、試験会場は静まり返り、誰も声を出さなかった。皆は黙々と作文を書き続け、誰も先生に答えなかった。中には余分なペンを隠す生徒もいた。

同じ試験会場にいても、入賞枠は限られている。皆がライバル同士なので、誰もペンを貸したがらなかった。

少なくとも、この試験会場の生徒たちは誰も貸す気がなかった。

「これは...」この状況に先生も困ってしまった。試験監督なので席を離れられず、他の生徒が貸したがらない中、見知らぬ生徒のために無理強いもできない。

橋本奈奈は深く息を吸い、唇を噛んで「先生、どうしても無理なら、赤ペンをお借りできませんか?」

「それは駄目です。今回の作文コンテストの規定では、青か黒のペンしか使えません。赤ペンは使用できません。」先生は残念そうに言った。ペンがないせいでコンテストに参加できないなんて、この生徒は本当に運が悪い。

橋本奈奈の目が赤くなった。最初はこのコンテストに参加するつもりはなかったが、せっかく来たのに、ペン一本のせいで諦めなければならないのが悔しかった。

一番重要なのは、彼女が三本のペンを用意していたことだ。新品もあれば普段使っているものもあった。

昨夜まで全く問題なかったのに、今日になって全部使えなくなるなんて、これは絶対におかしい。誰かが彼女の持ち物に手を加えたに違いない!

「手塚先生、どうしたんですか?」そのとき、教室の外に数人が立っていた。

「校長先生。」その中の一人の老人を見て、手塚先生は急いで外に出て説明した。「あの生徒のペンが全部壊れてしまって、他の生徒も余分なペンを貸せないそうで、試験が受けられない状況です。」

「...」校長先生は唇を一文字に結んで「今どきの子供たちは本当に。成績も大事だが、品性も学ばなければならないものだ。」

「私のを使ってください。」汗を流しながら焦っている橋本奈奈を見つめていた斎藤昇は淡々と言って、自分の万年筆を取り出した。