橋本奈奈は深呼吸をして、手を挙げた。
「何かありますか?」試験監督の先生が橋本奈奈の側に来た。
「先生、用意した三本のペンが全部壊れてしまって、字が書けません。ペンを一本お借りできませんか?」
「それは...」先生は困った様子で「私は赤ペンしか持っていません。誰か余分なペンを貸してあげられる人はいませんか?」
試験監督の先生の質問に対して、試験会場は静まり返り、誰も声を出さなかった。皆は黙々と作文を書き続け、誰も先生に答えなかった。中には余分なペンを隠す生徒もいた。
同じ試験会場にいても、入賞枠は限られている。皆がライバル同士なので、誰もペンを貸したがらなかった。
少なくとも、この試験会場の生徒たちは誰も貸す気がなかった。
「これは...」この状況に先生も困ってしまった。試験監督なので席を離れられず、他の生徒が貸したがらない中、見知らぬ生徒のために無理強いもできない。