「何か問題でもあるの?」橋本奈奈は目を瞬かせて「お姉ちゃん、どうして急に私の勉強のことを気にかけるの?」
「私はあなたのお姉ちゃんよ。気にかけるのは当然でしょう?」橋本絵里子は苦笑いして「正直に答えなさい。今日の作文は一体何を書いたの?」
「特に何も。本当に私のことを気にかけているなら、教えてあげるけど、私はうまく書けたと思うわ。心配しないで。お姉ちゃんも頑張ってね」橋本奈奈は笑った。絵里子が聞けば聞くほど、奈奈は答えようとしなかった。
「私のことは心配しなくていいわ」橋本絵里子は軽蔑したように言った。「あなたが何を書いたのか知りたいだけよ。素直に答えればいいじゃない」
「じゃあお姉ちゃん、今日何を書いたか教えてくれない?題は同じだったでしょう。話し合ってみない?」
「……」橋本絵里子が一言言えば、奈奈が一言返す。しばらく話しても、絵里子は有用な情報を何も引き出せず、むしろ自分が罠にはまりそうになった。
言葉に詰まった橋本絵里子は橋本奈奈にやり込められて何も言えなくなった。「あなたって本当に、聞かれたことだけ答えればいいのに、余計なことを言って何になるの?」
「私が聞いたことにも、お姉ちゃんは答えてくれなかったじゃない?」
「橋本奈奈、わざとやってるの?」橋本絵里子は心中で不安になり、疑わしげに尋ねた。
「わざとって何を?」橋本奈奈は眉を上げ、絵里子に言葉をはっきりさせるよう促した。
「な、なんでもない。もういいわ、言いたくないなら言わなくていい」橋本絵里子はもう話を続けられなかった。奈奈の作文を盗んで今日使ったことを、奈奈に告げるわけにはいかなかった。今日奈奈が新しい作文を書いたのか、それとも自分が盗んだ古い作文を使ったのかを聞くこともできなかった。
しばらく聞いても結果が出なかった橋本絵里子は、心の中で怒りが込み上げてきたが、奈奈に当たることもできず、ただ足を踏み鳴らして、青ざめた顔で部屋を出て行った。
橋本絵里子が奈奈の部屋を出るや否や、伊藤佳代は何かに取り憑かれたように奈奈を探しに来た。「さっきお姉ちゃんをいじめてなかった?」