「でも何?」上司は二つの作文を手に取って見ると、確かに、二つの作文の内容は全く同じで、ただ修辞法に若干の違いがあるだけだった。
そして、もう一人の先生の「ただ」が何を指しているのかも、上司には分かった。
高校部で二位に選ばれたこの作文は、中学部の一位の作文よりも少し劣っているように感じられ、むしろこの中学生の作文の方が、文章が洗練されており、より的確な表現がなされていた。
二つの作文が全く同じというのは、何か問題があるに違いない。
しかし、高校生の作文が中学生の作文に及ばないとは、これはどういうことだろうか?
まさか、この二人の生徒の作文は自分で書いたものではなく、代筆者を雇ったのだろうか。違いは、中学生の方が代筆者からより質の高い文章を得たということか?
上司は眼鏡を鼻から外して言った。「すぐにこの二つの作文がどの学校のどの生徒のものか調べて、彼らの担当教師を呼んでください。このような行為は必ず処分しなければなりません。問題を明らかにする必要があります!」
週末に自宅で休んでいた木下先生は、学校の上司から一本の電話で再び省都に呼び出された。
「副校長、どういう状況なんですか?」木下先生が副校長から指示された書類をすべて用意して省都に到着すると、副校長もすでに来ていた。
「上の人から聞いたところによると、橋本奈奈の作文が『かぶった』そうだ。高校部から似たような作文が出てきて、二つの作文の類似度が90%以上だという。これはどういうことだ?」副校長は額に大粒の汗を浮かべながら焦っていた。もし橋本奈奈が他人の作文を写したのなら、学校の名誉はどうなるのか。「橋本奈奈という生徒はどんな生徒で、彼女の作文に本当に問題があるのか?」
副校長は知っていた。今回作文コンテストに参加した5人の生徒のうち、1人は国語科の教師たちが共同で内定した生徒で、その生徒は木下先生の担当だった。
だから副校長には、内定した生徒がこの橋本奈奈ではないかと疑う理由があった。
木下先生と副校長が到着すると、付属高校の橋本絵里子の担任教師と上層部もすでに到着していた。
双方とも事情は分かっていたが、みな教育者として最低限の品格は保っており、お互いに無理やり挨拶を交わした後、直接事務室に入った。