第065章 母親を半分あげよう

「分からない」と橋本奈奈は正直に首を振った。

「橋本さん、同級生だからこそ忠告するけど、この本は一目で高価なものだと分かるわ。受付室で人違いをしたのかもしれないから、本を傷つけたり、書き込んだりしないほうがいいわよ。でないと、あなたには弁償できないわよ」井上雨子は今度は他人の不幸を喜ぶような態度で言った。誰かが橋本奈奈にプレゼントを贈るなんてありえないと思っていたのだ。

「たかが知れてるだろう。俺の妹に弁償できないわけないだろう!」白洲隆は目を見開いて、不機嫌そうに言った。

「白洲くん、あなたがお金持ちなのはあなたの勝手だけど、橋本さんにはお金がないでしょう。橋本さん、もしかして白洲くんのお金で返そうと思ってるの?」

白洲隆が橋本奈奈をかばえば守るほど、井上雨子の心は不快になっていった。