第066章 成績の良し悪し

もし周りの人が止めていなかったら、白洲隆はその時の凶暴な様子で、人を殺してしまったかもしれない。

他の人は白洲隆が殴られただけだと言うが、なぜ橋本奈奈が白洲隆の母親のことを言ったのに、何も問題なく済むのか?これは不公平だ。

心の中で不安に思う井上雨子は、自分が橋本奈奈を嫌う理由も同じようなものだということを考えようとしない。このような事に公平も何もない。

井上雨子がどれほど気に入らなくても、橋本奈奈と白洲隆の関係は徐々に良好になっていった。

時間が経つのは早いもので、橋本奈奈にとっては前世の悲惨な人生を書き換え始めたばかりだったが、あっという間に半学期が過ぎていた。

そして、橋本奈奈も橋本絵里子も中間テストを迎えることになった。

今回の橋本奈奈は前回よりもずっと準備が万全で、中間テストに期待を寄せていた。最近の復習がどの程度の成果を上げているのか試してみたかった。

たとえテストの最終結果が全てを表すわけではないにしても、少なくとも大まかな理解は得られるはずだ。

橋本奈奈の意気込みに比べ、白洲隆は自信がなかった。「もし俺が良い点を取れなかったら、お前は...」俺のことを見下すのか?

「あなたが良い点を取れないのは当然でしょう?」橋本奈奈は眉を上げた。白洲隆の復習を手伝い始めてまだ1ヶ月ほどしか経っていない。カンニングでもしない限り、良い点は取れるはずがない。

「わかったよ、何も言わなかったことにする」橋本奈奈の言葉は白洲隆を見下すような意味合いを含んでいたが、それも事実だった。

この1ヶ月余りの付き合いで、白洲隆は橋本奈奈の率直な物言いと、その率直さゆえに人を傷つける毒舌に慣れてきていた。

テストの関係で、この日は早めの下校時間だった。橋本奈奈は橋本家に帰りたくなかったので、白洲隆を連れて木下家で復習することにした。

木下おじいさんは孫が最近中間テストを終えたことを知っていた。

本来なら、木下おじいさんは孫にテストの出来を聞きたかった。

十数年間この孫を疎かにしてきたため、今になって孫と親密になりたいと思っても、どう話しかければいいのか分からなくなっていた。

まして、孫は今まで真面目に勉強してこなかったのだから、今回のテストでどんな成績が取れるか期待もできない。