二人とも実の娘なのに、奈奈も橋本東祐が自ら望んで産んだ子なのに、木下おじいさんには橋本東祐がどうしてこんな事態を引き起こしたのか理解できなかった。
木下おじいさんが疲れた様子を見て、橋本東祐はもう一言も発せず、黙って立ち上がり、その場を去った。
橋本東祐が木下おじいさんを知って以来、たとえ第二子を産むために部隊を去ったことで失望されても、こんな言葉を言われたことは一度もなかった。
「奈奈、帰ってきたのか」橋本東祐が橋本家に戻ったとき、橋本奈奈はもちろん帰っていた。
橋本奈奈は一瞬戸惑い、それから「お父さん」と呼んだ。
末娘の冷たい態度を見て、橋本東祐はため息をつき、奈奈は田中さんを恨んでいるだけでなく、実は自分のことも恨んでいるようだった。
「勉強するところかな?」
「うん」橋本東祐が何を言いたいのかわからず、橋本奈奈は依然として橋本東祐とのコミュニケーションを拒否することを選んだ。どうせ母親の件に関しては、絶対に妥協するつもりはなかった。
「じゃあ、行きなさい」
「はい」
父娘の会話は橋本奈奈の簡単な「うん」と「はい」で終わった。
夕食の時になって、橋本東祐はようやく口を開いた。「奈奈、明日木下家に行きなさい」
「木下家?」橋本奈奈は瞬きをして「木下おじいさんの家?」
「何が木下おじいさんだ、おじいちゃんと呼びなさい」橋本東祐は橋本奈奈を叱った。「明日、白洲隆が木下家に行くから、白洲隆の勉強を見てあげなさい。覚えておきなさい、しっかり教えるんだよ、隆に。わかった?」
「……」
橋本奈奈は唇を噛んで、淡々と「はい」と言った。
最初は不機嫌だった伊藤佳代は橋本奈奈のこの反応を見て、よく考えてみるとその意味がわかってきて、口角が少し上がって笑った。今回は何も反対しなかった。
橋本東祐は既に木下おじいさんに約束していたので、橋本奈奈には他の選択肢がなく、週末には本を持って木下家に行くしかなかった。橋本奈奈が着いた時、白洲隆は既にいた。
「やあ、来たね」白洲隆は両足を机の上に乗せ、椅子の背もたれに寄りかかり、口を尖らせて、上唇と鼻で鉛筆を挟んでいた。その様子は勉強しに来たというよりも、バカンスに来たようだった。