第068章 水準を取り戻す

「まあ、いいじゃないか」橋本奈奈は、これ以上話を続けると白洲隆がまた怒り出すだろうと察し、適度に切り上げた。

朝一時限目は担任の田中先生の数学の授業だった。田中先生は爽やかな表情で、颯爽と教室に入ってきた。

田中先生のこの表情を見て、クラスの多くの生徒が安堵のため息をついた。どうやら今回の1組の成績はそれほど悪くなさそうだ。

中間テストは学期に二回しかない重要な試験だ。特に1組のような優秀なクラスでは、気にしない生徒はほとんどいない。

「今回の中間テスト、我がクラスの成績は良好で、特に一部の生徒の進歩には非常に満足しています」と言いながら、田中先生は特に橋本奈奈の方向を見た。

田中先生のその視線の意味を理解し、クラスの多くの生徒がため息をついた。田中先生がこんなに嬉しそうなのは、橋本奈奈の成績が良かったからだ。田中先生は橋本奈奈に本当に優しい。

「しかし、みなさん覚えておいてください。勝って驕らず、負けて悔やまず。私たちは引き続き維持し、さらなる進歩を目指さなければなりません。では、答案を返却します。橋本奈奈」

田中先生は点数を発表しなかったが、最初に橋本奈奈の答案を渡した。明らかに田中先生は来る前に橋本奈奈の答案を確認していた。

多くの生徒が首を伸ばして橋本奈奈の点数を見ようとしたが、橋本奈奈は答案を受け取るとすぐに二つに折り、手に持って自分の席に戻った。

そのため、他の生徒が見えたのは、橋本奈奈の大問が完璧に正解で、減点が一つもないということだけだった。

「満点?」白洲隆は眉を上げた。この隣の席の生徒は並外れて凄いな、こんな高得点を取るなんて。

「満点だったらよかったのに」橋本奈奈はため息をつきながら「98点」と言った。

実は答案を受け取る前から、橋本奈奈はこの点数を予想していた。

今学期の新しい内容については自信があったが、数学の試験の最後の空所補充問題は複雑で難しい問題だった。橋本奈奈は空欄を埋めはしたものの、自信はなかった。

案の定、答案を受け取ると、その箇所にバツ印があり、2点減点と書かれていた。

「それでもすごいじゃないか」白洲隆は驚いて「中学校に入ってから90点以上なんてそう簡単に取れるわけないし、95点以上なんて小学校みたいに当たり前じゃないぞ」