第089章 相談して変えよう

伊藤佳代は呆然としていた。橋本さんはいつからこんなに冷酷になり、絵里子にこんなに冷たくなったのだろうか?

「絵里子にはあなたがいるじゃないか。あなたが家計をうまく切り盛りすれば、絵里子は必ず学業を続けられるはずだ。それに、たとえ学費をすぐに払えなくても、学校はすぐに退学させたりしないだろう。何か方法を考えればいいじゃないか。でも絵里子はプライドの高い子だから、学費を滞納したまま学校に通わせたら、勉強に集中できないだろう。一つアドバイスするけど、お金はもっと慎重に使った方がいい。絵里子が学校で困らないようにね。この前の作文の件で、すでに先生に良くない印象を与えてしまったんだから。ここまで言えば、あとは自分で考えてくれ」

以前は、本当に田中さんを甘やかしすぎていた。田中さんが絵里子をここまで甘やかすことを許してしまった。

たとえ絵里子が将来婿養子を迎えることになっていて、奈奈が嫁に行くことになっているとしても、二人とも自分の娘なのに、なぜ絵里子は年に何着も新しい服を買ってもらえるのに、奈奈は一着も買ってもらえないのか。

木下おじさんの言う通り、以前の自分は本当に頭が狂っていた。

この家を田中さん一人に任せていたら、いずれ混乱することになる。

伊藤佳代の今にも涙がこぼれそうな赤い目を見ることもなく、決意を固めた橋本東祐は伊藤佳代のこの偏った性格を直そうと決めた。たとえ五本の指にも長短があるように、親が子どもを偏愛するのは避けられないとしても、田中さんの奈奈への態度はこれではいけない。

伊藤佳代を置き去りにして、橋本東祐は顔と足を洗い、先に布団に入って寝てしまった。伊藤佳代のことは気にも留めなかった。

伊藤佳代は今回本当に怒り、深く傷ついていた。一人で居間に座り、背中を丸め、時々手の甲で目尻を拭いながら、無言で泣いていた。

しばらくの間、居間には伊藤佳代の断続的なすすり泣きと息遣いだけが聞こえていた。

伊藤佳代が一人で座っているうちに体が冷え切って痺れてきたころ、やっとゆっくりと立ち上がり、顔も洗わずに部屋に戻った。

布団が盛り上がっているのを見て、伊藤佳代は鼻をすすり、服を脱いで、黙って横になった。

隣に寝ている人の体温は高く、暖かいはずなのに、伊藤佳代は心が冷え切っているように感じた。その寒さは骨の髄まで染み込んでいた。