第088章 言い切る

橋本奈奈はハサミを手に取り、タグを切り落として、伊藤佳代が返品して金を取り戻せる可能性を完全に断ち切った。そして、嬉しそうに新しい服を自分の体に当てて、橋本東祐の前に走り寄って尋ねた。「お父さん、私に似合ってる?」

「似合ってるよ」橋本東祐は笑顔で言った。「気に入ったなら、明日の学校に一着着ていって、もう一着は新年用に取っておきなさい」

「うん、お父さんの言う通りにする」橋本奈奈は本当の15歳の子供ではなかったが、新しい服を手にして、まるで子供のように喜び、頬を赤らめていた。

橋本奈奈が喜べば喜ぶほど、伊藤佳代の目は赤くなり、目つきは険しくなっていった。

「奈奈に新しい服を二着も買うなら、絵里子にも三着買わなきゃダメよ!」伊藤佳代は要求した。

「だめだ」橋本東祐はきっぱりと断った。「最初から決めていたじゃないか。絵里子のことは君が面倒を見て、奈奈のことは俺が面倒を見る。絵里子に三着服を買いたいなら、構わないよ。自分のお金で買えばいい」