橋本奈奈はハサミを手に取り、タグを切り落として、伊藤佳代が返品して金を取り戻せる可能性を完全に断ち切った。そして、嬉しそうに新しい服を自分の体に当てて、橋本東祐の前に走り寄って尋ねた。「お父さん、私に似合ってる?」
「似合ってるよ」橋本東祐は笑顔で言った。「気に入ったなら、明日の学校に一着着ていって、もう一着は新年用に取っておきなさい」
「うん、お父さんの言う通りにする」橋本奈奈は本当の15歳の子供ではなかったが、新しい服を手にして、まるで子供のように喜び、頬を赤らめていた。
橋本奈奈が喜べば喜ぶほど、伊藤佳代の目は赤くなり、目つきは険しくなっていった。
「奈奈に新しい服を二着も買うなら、絵里子にも三着買わなきゃダメよ!」伊藤佳代は要求した。
「だめだ」橋本東祐はきっぱりと断った。「最初から決めていたじゃないか。絵里子のことは君が面倒を見て、奈奈のことは俺が面倒を見る。絵里子に三着服を買いたいなら、構わないよ。自分のお金で買えばいい」
家の貯金が全て使い果たされてから、橋本東祐も賢くなった。このお金は自分でしっかり管理しなければならない。
妻は大胆すぎた。家の貯金を全て使い果たし、彼に一言の相談もなかった。
お金が使い果たされてから一、二ヶ月経って、家長である彼がようやく知ることになった。
今回こんなことをしたのだから、次回も妻は同じことをするに違いない。
彼らの家はそれほど裕福ではなく、このような使い方は絶対に続けられない。
橋本東祐は少し男尊女卑的な考えを持っていた。本来は伊藤佳代が無駄遣いをするから、そうでなければ橋本東祐は通常、伊藤佳代に外で働いてほしくなかった。家のことをしっかり管理するだけで十分だった。
伊藤佳代が働いて稼ぐ給料には、橋本東祐は一切口を出さなかったが、自分が稼いだお金は必ず自分で管理しなければならなかった。
伊藤佳代が橋本絵里子をどう可愛がろうと、橋本東祐は相変わらず関与しなかった。伊藤佳代が稼いだお金をどう使おうと、彼は依然として関与しなかった。
しかし、伊藤佳代が自分のポケットに手を伸ばそうとすることには、橋本東祐は今回は同意できなかった。