橋本東祐が橋本奈奈と話している間、橋本絵里子は伊藤佳代の側にいて、頭を寄せ合って話していた。「お母さん、開校まであと三日なんだけど、私の学費は?」
「……」伊藤佳代の顔は豚レバーのような色になり、絵里子の質問に全く答えられなかった。
「お母さん、こんなに経ってるのに、お父さんまだ折れてないの?」橋本絵里子は眉をひそめ、疑わしげに尋ねた。「最近、お母さんとお父さんが話してるところ全然見てないんだけど、お父さんまだ謝ってないの?じゃあ私の学費はどうするの?!」
年初に、伊藤佳代は橋本東祐に意地を張るため、そして橋本絵里子の前で面子を保つために、普段は倹約していた生活費を大量に使ってしまった。
その結果、橋本絵里子は欲しかったブレスレットを買えただけでなく、新しい服も一着手に入れることができた。
毎日外出して、テレビを見たり、外食したり、どれも出費がかさんでいった。
想像できるように、伊藤佳代の財布の中にはもうそれほどお金が残っていなかった。
橋本絵里子の今学期の学費を払うどころか、最初の月の生活費さえも足りないかもしれない状況だった。
「お母さん?」伊藤佳代の表情を見て、橋本絵里子は完全に怯えてしまった。「お母さん、お父さん本当にまだ謝ってないの?でも私もうすぐ開校なのに、学費はどうするの?私は大学に行かないかもしれないけど、高校は卒業しなきゃいけないでしょ!」
高校も卒業できないなんて、そんな恥ずかしい思いはしたくなかった。
「あ、慌てないで、なんとかするから、必ず学校に持っていけるお金を用意するから。」伊藤佳代の顔色が青ざめながら、絵里子を慰め続けた。
「お母さん、私知らないよ、とにかく学費を早く用意して。私、一日前に学校に行かなきゃいけないの、寮の布団とか全部干さなきゃいけないでしょ。だからお母さん、遅くとも明後日までに、学費と生活費を全部用意して。」
橋本絵里子は伊藤佳代に厳しい要求を突きつけた。自分の言葉が伊藤佳代を困らせるかもしれないとか、伊藤佳代にそれが可能かどうかなど考えもせずに、言い終わると女王のように立ち去った。
伊藤佳代の青ざめた顔が少し歪んだ後、粗い手のひらで自分の顔をこすった。お金お金お金、どこからこんな大金を急に工面すればいいのか。