第113章 また心が軟らかくなった

しかし、この時、斎藤のお父さんを説得していた斎藤花子は、斎藤昇にとってこの例外が一度起これば、それが永遠の「例外」になってしまうことなど、想像もしていなかった。

「ハックション」そのまま寄りかかって一晩中眠っていたため、予想通り伊藤佳代は風邪を引いてしまった。幸い熱は出なかったものの、鼻水とくしゃみは止まることを知らなかった。

「お母さん、温かいお茶をどうぞ」伊藤佳代が鼻をかむ音を聞いて、橋本絵里子は眉をしかめながら、しぶしぶ温かいお茶を注いでやった。

伊藤佳代は具合が悪くて目が赤くなっていた。「絵里子、私から離れていなさい。風邪をうつしてしまうから」

温かいお茶を飲んでも、伊藤佳代の体の不快感は少しも和らがなかった。

「お母さん、薬飲んだ?」

「まだよ」

「取ってくるわ」橋本絵里子は走って探しまわった。「お母さん、家にあるのは前に奈奈が使った熱さましの薬だけみたい。風邪薬はもうないみたい。お母さん、お金ちょうだい。買いに行ってくるわ」