第114章 自滅への道

父と娘が家に帰ったとき、橋本奈奈は伊藤佳代と橋本絵里子の行動がこれほど「すごい」とは思いもよらなかった。

探し物に夢中になりすぎていたのか、橋本東祐と橋本奈奈が家に帰ってきた気配に、伊藤佳代と橋本絵里子は全く気付かなかった。

橋本東祐は先ほど橋本奈奈の言葉を聞いて、とても理にかなっていると思い、伊藤佳代と橋本絵里子と話をしようと考えていた。しかし、家に帰ってみると、母娘が自分の部屋に入り込んで、部屋を壊さんばかりに何かを探し回っているところだった。

汗を流しながら探しているが、何を探しているのか?

もちろんお金だ!

橋本東祐は息を飲み、怒りで顔を真っ赤にし、首を後ろに反らして、よろめいた。

橋本奈奈は急いで一歩前に出て、橋本東祐を支え、そして泥棒が入ったかのように散らかされた部屋を目を見開いて見つめた。「お母さん、お姉ちゃん、何してるの?私とお父さんも手伝おうか?」

母とお姉ちゃんは、お父さんのお金を探しているの?

とんでもない!

「あっ!」伊藤佳代は大きく驚き、振り返ると橋本東祐の大きく見開かれた目が自分をじっと見つめているのに気付き、胸の鼓動が激しくなった。「あ、あなたたち帰ってきたの。」

「お、お父さん。」橋本絵里子も驚いて、手足をどこに置いていいか分からないほど慌てていた。

「さっきの奈奈の質問が聞こえなかったのか?二人とも何を探しているんだ?手伝おうか?」橋本東祐は冷笑を浮かべた。

「い、いいえ、大したものじゃないから、見つからなくても構わないわ。」伊藤佳代は、橋本東祐が隠したお金を探していたとは、とても堂々と言えなかった。

手伝えることもあるが、絶対に言えないことだってある。

「本当に必要ないのか?」橋本東祐は先ほどの躊躇いや優しい気持ちが、母娘が部屋を探し回る様子を目の当たりにして、跡形もなく消え去った。「奈奈、ちょっと手伝ってくれ。」

「はい。」橋本奈奈は唇を噛み、心の中で伊藤佳代と橋本絵里子に拍手を送った。

二人の部屋の探し方のタイミングがあまりにも絶妙だった。これで、彼女は何もする必要がなく、母と橋本絵里子が自ら自分の首を絞めてくれた。

「橋本さん、何をするつもり?」橋本東祐が服を探し始めるのを見て、伊藤佳代の顔色はさらに青ざめた。