橋本東祐は伊藤佳代と橋本絵里子をコントロールできないので、自分でできる限り節約するしかなかった。
家のことを除いて、橋本東祐は大の男が外で一ヶ月百円も使わないほど倹約していた。昼食を外で済ませることも稀だったが、その時でも肉料理は頼まず、野菜料理を一品だけ注文するようにしていた。
しかし、家長として、橋本東祐は自分がどんなに心配していても、家の三人の女性には言い出せなかった。
橋本東祐はこの家で一番自分のことを思いやってくれるのは妻の伊藤佳代だと思っていたが、意外にも普段は寡黙な末っ子だった。
「奈奈、お前が平泉中学校に行くのは、父さんがお金のことで悩んでいるのを見たからか?」橋本東祐は鼻をすすり、声が詰まりがちだった。
「うん、私と姉さんが大学に行くなら、お父さんとお母さんには無理だってわかってる」橋本奈奈は淡々と答えた。「私と姉さんは違うって知ってる。両親は小さい頃から姉さんの方が好きだった。お母さんが前に私にバイトをさせようとしたのも、どういう意味かわかってる。お父さんが私の勉強を支持してくれるのは珍しいから、お金は稼げないけど、せめて他のことでお父さんの負担を少しでも減らしたいの」
「奈奈、父さんは役立たずだな。娘を産んでも育てられない」橋本東祐の声には苦さが満ちていた。末っ子が全てを知っていながら、何も言わずに黙って耐えていたことを知って:「奈奈、辛くないか?」
「最初は辛かった。私と姉さんは両親の娘なのに、なぜこんなに差があるのかわからなかった。でも、慣れてしまえば何とも感じなくなった」
橋本奈奈の感情が穏やかであればあるほど、橋本東祐の自責の念は強くなった。子供がこれほど長く辛い思いをして、麻痺してしまい、両親に対する感情さえも失いかけているのだ。
なるほど、この一年、彼が田中さんと喧嘩するたびに、奈奈が何も反応せず、とりなすこともしなくなった理由がわかった。
「お父さん、仕事に行ってきて。もうこのことで悩まなくていいよ。姉さんの大学の学費を用意するのに、まだ二年はあるでしょう。私のことは、また考えればいい」橋本家の経済状況を考えると、橋本奈奈も頭が痛かった。
今の状況なら、確かに夏休みを利用してバイトを見つけることはできる。しかも、橋本絵里子より稼げるはずだ。