「いいわよ、うちのことはあなたに任せるわ。あなたの言う通りにするわ」伊藤佳代は笑った。橋本東祐がそう言ってくれたということは、少なくとも心が動いているということだと分かっていた。
橋本奈奈が不満そうでも、橋本東祐は必ず奈奈を説得して、この件を承諾させようとするだろう。
橋本東祐が必ず奈奈を説得してくれると分かっていたので、伊藤佳代は自然と口を出さずにいられた。それに、奈奈の前で悪い人になるのは、橋本さんにやってもらった方がいい。橋本さんが言ったように、あの生意気な娘は母親である自分のことを認めなくなりそうだから。
やっとのことであの生意気な娘を育て上げたのに、あと数年もすれば学校を卒業して働き出すだろう。
もしあの生意気な娘が本当に自分を母親として認めなくなったら、奈奈が稼いだお金を全部自分のものにできるだろうか?