第121章 まだ不満なのか

昔、白洲隆は気性が荒かった。たとえ白洲隆が本当のことを言っていても、誰も信じてくれないと、まるで正気を失ったかのように暴れ出すのだった。そんな白洲隆に対して、大野宏が勝つのは簡単すぎた。

しかし今日、白洲隆は橋本奈奈の一目と一言で落ち着いてしまった。

この状況に直面して、大野宏は不安を感じ始めた。

あの日の尿を白洲隆がまだ保管していると聞いた時から、大野宏は既に後ろめたさを感じていた。

「どうすればいいと思う？」少し冷静になってから、白洲隆は橋本奈奈に向かって尋ねた。

「お父さんに電話して」と橋本奈奈は言った。

白洲おじいさんにとって、孫の方が可愛いはずだが、外孫は今まで素直で、痩せて弱々しく、いじめられやすそうに見えるため、白洲おじいさんはこういう時、きっと大野宏の味方をするだろう。

表も裏も同じ肉だと言うが、白洲隆の過去の黒歴史が多すぎて、彼を信じ、味方する人は少なかった。

「無駄だよ。父さんはずっと彼の方が素直だと思ってる。父さんは僕を助けてくれないよ」白洲隆は暗い表情を浮かべ、父が自分のことを全く好きではないということを言いかけた。

「彼に助けてもらう必要はない。お父さんは軍人だから、ここにいる誰よりも冷静だ。お父さんに電話して、それから病院で検査を受ける。結果が出れば、少なくともお父さんは理解してくれるはず」今、白洲家の実権は白洲おじいさんではなく、すべてが白洲成木に移っていた。

だから白洲成木の態度と見解が、白洲隆にとって最も重要だった。

「だめだ！」大野宏は突然立ち上がった。「絶対にだめだ」

橋本奈奈のこの方法が本当に通用するのか疑問に思っていたが、大野宏が「だめだ」と叫んだ時、白洲隆は即座にテーブルを叩いて言った。「よし、これで決まりだ。今すぐ父さんに電話する」

「お前…」大野宏は自分の舌を噛みそうになった。最初の「だめだ」を叫んだ時点で、大野宏は既に後悔していた。

しかし、興奮と緊張のあまり、大野宏は自分をコントロールできず、一回目の「だめだ」を叫いただけでなく、二回目も叫んでしまった。

白洲おじいさんと白洲瞳の驚いた目と白洲隆の意地悪な表情に直面して、大野宏は顔が真っ白になるほど怒り、そして橋本奈奈を睨みつけた。