「ふん、何が得意になることがあるの?中学の試験で一位を取っただけじゃない。本当の実力があるなら、大学入試でも一位を取って、東京大学や東大に入ってみなさいよ」断られたおばさんは不機嫌になり、言葉が少し荒くなった。
彼女の言葉には嫉妬が含まれていたが、本当に橋本奈奈に自分の孫に無料で家庭教師をしてほしかったのだ。
しかし、橋本奈奈はそんなことは全く気にしていなかった。高校のことが決まってからは特に嬉しく、橋本東祐が帰ってきたらこの良い知らせを伝えようと待っていた。
禍福は糾える縄の如しという言葉通りだったのかもしれない。
橋本奈奈の良い気分は半日も続かず、悪い知らせを聞くことになった。
「奈奈ちゃん、お母さんは家にいる?」橋本東祐の同僚が慌てた様子で橋本家に駆け込んできた。伊藤佳代は見当たらず、橋本絵里子と橋本奈奈の二人だけがいた。