第151章 斎藤お兄さんは違う

どういうわけか、斎藤昇は心の中に名状しがたい怒りが湧き上がり、橋本奈奈に対する口調は今までにないほど厳しく真剣なものとなった。それに驚いた橋本奈奈は思わず姿勢を正して座り直した。

「知っておくべきだが、今の社会の人々は非常に複雑だ。お嬢ちゃんは、安全意識を持たなければならない。保健の授業で習ったはずだが、男は女に対して侵略的な本能を持っているんだ。普段ニュースを見ているだろう?自分の視点だけで世界を見たり、外の人々、特に男を見たりしてはいけない。」

「斎藤お兄さん、それは少し大げさじゃないですか?ニュースって、強姦事件のことですか?そんなこと、私には起こらないと思います。」橋本奈奈は少し困惑した。斎藤昇が心配してくれているのは分かるが、少し大げさな表現だと感じた。

この世界は少し乱れていて、そういった事件も多い。

確かに、自分は容姿も悪くないし、好意を寄せる人もいる。

でも前世では、四十歳近い独身女性だった。母親に怒り死ぬまで処女だったなんて、言えるはずがない?!

「起こらないと思うのか?!」橋本奈奈の無頓着な態度に、斎藤昇の心の中の小さな火が大きな炎となった。

斎藤昇は何も言わずに橋本奈奈の隣に座り、鉄のように硬い腕で突然彼女の細い腰を抱き締め、まるで牢獄のように自分の腕の中に閉じ込めて、逃げられないようにした。

「今、俺が何かしようとしたら、抵抗できるのか?」

「できません。」斎藤昇にこうして抱きしめられ、橋本奈奈は呆然として、特に頭がぼんやりして、「理性」というものが体から飛び出していくような感覚で、ぼんやりと言った。「でも斎藤お兄さんはそんなことしませんよ。」

斎藤昇は呆れて笑った。「なぜしないと思う。」俺だって男なんだ!

「斎藤お兄さんは軍人ですから!」軍人が悪事を働くはずがない、そう思っていた。

「誰が、この世に絶対的な善人がいると言った?」斎藤昇は突然、橋本奈奈が本当に軍人を好んでいることに気付いた。軍人に対して盲目的とも言える信頼と崇拝の念を持っているようだった。このことは、斎藤昇に微かな喜びと、わずかな焦りを感じさせた。

軍人として、斎藤昇はずっと分かっていた。もし結婚したら、妻や子供と過ごす時間はきっと多くないだろう。