橋本東祐は腹の中に溜まった怒りを発散できず、一時的に体の利かない廃人のように寝たきりになっていた。伊藤佳代はさらに銃口に向かって突っ込むように、不用意な行動を取った。橋本東祐が伊藤佳代を責めずに、誰を責めるというのか?
橋本東祐は黙り込み、伊藤佳代も心中穏やかではなく、夫婦二人は沈黙を保ち、お互いを無視し合った。
橋本家では、橋本絵里子は戻ってきたのが橋本奈奈だと知って、少し驚いた。
しかし橋本奈奈は帰ってきても、彼女に病院での夜勤を頼まなかった。橋本絵里子はそのまま黙っていて、伊藤佳代が帰ってこない理由も聞かなかった。「奈奈、もうこんな遅いのに、夕食作ってよ。それと、私の服も洗濯してちょうだい。私、疲れちゃって。」
橋本奈奈が帰ってきたので、橋本絵里子は全ての家事は橋本奈奈がやるべきだと思い、自分はようやく手を休められると考えた。