「もういいわ。これ以上言うことはないわ。お父さんの好きなようにすればいいわ。私には関係ないし、お父さんのためにできることはこれくらいよ」
橋本絵里子はお父さんの娘だから、お父さんは放っておけない。お母さんのことは無視できても、実の父親は実の父親だから、お父さんのことも無視できない。結局は同じ理屈なのだ。
そう考えると、橋本奈奈の心は少し楽になった。
「奈奈、心配しないで。あなたが借りたお金は、父さんが返すから」
「お父さん、あなたは...」橋本奈奈は顔を上げ、躊躇いながら橋本東祐を見つめた。「お母さんが...何か言ったの?」まさか、お母さんはいつも最後まで認めない性格なのに、どうして自分から父の前で本当のことを話すはずがない。
「お母さんが?」橋本東祐は冷笑した。「お母さんのその悪い癖は、一生直らないだろうな」