「安心して、全部解決したわ」橋本奈奈は白洲隆を慰めた。「旅行って聞くと遊びに聞こえるけど、結構大変なのよ。帰ってきたんだから、ゆっくり休んだ方がいいわ」
もう事は過ぎ去り、お父さんも今日退院できる。言わなくていいことは、奈奈は白洲隆の前であえて触れたくなかった。
「本当に大丈夫なの?解決したって?」彼は信じられない様子だった。
「本当よ」橋本奈奈は頷いた。「知ってるでしょう?私の英語はまあまあだから、友達が翻訳の仕事を紹介してくれて、少し副収入を得られたの。心配しないで、本当に困ったことがあったら、必ずあなたに助けを求めるわ」
「それはいいね。一体どの友達なの?僕にも紹介してよ」
「タイミングが悪くて、彼はちょうど用事があって行っちゃったの。今は多分もう平泉にいないわ。次にいつ戻ってくるかは、私にも分からないわ」橋本奈奈は手に持っているものを少し持ち上げた。「はい、お土産ありがとう。でも言っておくけど、私は旅行に行ってないから、お返しはないわよ」
「馬鹿にしてるの?誰がお返しを求めてるんだよ。帰るよ」白洲隆はこんな贈り物のやり取りが形式的すぎると感じた。
橋本東祐が突然病気になって、橋本家の経済状況が良好とはいえ、それほど余裕があるとは思えなかった。
もし奈奈さんからお返しを受け取ったら、橋本家に、奈奈さんに負担をかけることになるじゃないか?
橋本奈奈がどんなに軽く話していても、白洲隆は橋本家の困難を察していた。もし困っていなければ、娘に夏休みにバイトをさせたりするだろうか?
いけない、さっきは急いで来すぎた。最近の橋本家の状況も、橋本おじさんが入院した理由も、全く分からない。
帰ったら、誰かに聞いて、最近橋本家に何があったのか、橋本おじさんがなぜ入院したのか調べないと。
「帰ってきたのか?」白洲おじいさんは汗だくになって戻ってきた孫を見て言った。「急がなくていいって言ったのに、どうしても今日持って行きたがって。隆、お前の心の中で、その同級生と爺さん、どっちが大事なんだ?」
孫が他人にこれほど親切で、ここまで気にかけているのを見て、白洲おじいさんは妬ましく思った。
孫を十数年可愛がってきたのに、まだ一度も孫からプレゼントをもらったことがない。それなのに橋本家のお嬢ちゃんには、孫が外出するたびに必ずお土産を買ってくる。