第154章 良い素質

橋本絵里子は、橋本東祐と彼の病室仲間が橋本奈奈のことばかり褒めるのを聞くのが嫌で、自分が脇に座っているのに透明人間のように扱われていることと、退屈でたまらないことに辟易していた。

橋本絵里子に真面目な本を読むように勧めても、彼女は興味を示さなかった。一年の内九ヶ月は勉強ばかりで、やっと休みになったのに、そんな本を読みたくなかった。

かといって他の本を読もうとすると、橋本東祐に何か言われそうで、この数日間、橋本絵里子はただぼんやりと座っているしかなかった。

もし橋本東祐がトイレに行きたくなっても、橋本絵里子は手伝えず、病室仲間か家族が付き添って行くことになっていた。

橋本絵里子は、このままここに座っていたら、カビが生えてしまいそうだと感じていた。

橋本絵里子は自分の立場からしか物事を考えないため、自分の言葉がどれほど唐突で不孝であるかということに気付いていなかった。

橋本東祐は車にはねられ、二度も手術室に運ばれ、生死の境をさまよっていたのだ。

それに、橋本東祐は今でも傷が完全に治っておらず、激しく動くと傷口から出血することもあった。

病室仲間とその家族が時々手を貸してくれなければ、橋本家の状況では橋本東祐の看病は難しかっただろう。

このような状況下で、橋本絵里子が残るのには一定の必要性があった。もし何か緊急事態が起きた時、橋本東祐には子供も妻もいるのに、身近に一人の肉親もいないというのは、どう考えても納得がいかないことだった。

橋本東祐は顔を曇らせ、橋本絵里子にどう言えばいいのか分からなかった。

長女の橋本絵里子は、田中さんに対してだけでなく、彼に対しても表面上は優しいが心は冷たかったのだ。

その瞬間、橋本東祐は四人家族の中で、橋本絵里子は自分以外の誰を気にかけているのか、この性格は少し薄情すぎるのではないかと考えた。

「お父さん、こうしましょう。夜はお母さんが付き添って、昼は私と姉で一日交代で」彼女の父が教えようとしても、橋本絵里子が学ぶ気があるかどうかだ。一日交代なら、橋本絵里子も文句は言えないだろう。

橋本奈奈は、橋本絵里子の先ほどの言葉が、実は自分に向けられたものだと分かっていた。

「じゃあ今日は誰?」橋本絵里子の表情が和らぎ、口調もようやく良くなった。