橋本絵里子は、橋本東祐と彼の病室仲間が橋本奈奈のことばかり褒めるのを聞くのが嫌で、自分が脇に座っているのに透明人間のように扱われていることと、退屈でたまらないことに辟易していた。
橋本絵里子に真面目な本を読むように勧めても、彼女は興味を示さなかった。一年の内九ヶ月は勉強ばかりで、やっと休みになったのに、そんな本を読みたくなかった。
かといって他の本を読もうとすると、橋本東祐に何か言われそうで、この数日間、橋本絵里子はただぼんやりと座っているしかなかった。
もし橋本東祐がトイレに行きたくなっても、橋本絵里子は手伝えず、病室仲間か家族が付き添って行くことになっていた。
橋本絵里子は、このままここに座っていたら、カビが生えてしまいそうだと感じていた。
橋本絵里子は自分の立場からしか物事を考えないため、自分の言葉がどれほど唐突で不孝であるかということに気付いていなかった。