林康弘は岡本茜の可愛らしい顔が歪むのを見ながら、まるで何も気付かないかのように談笑を続けていた。
「林おじいさん、もう遅くなってきましたので、私はこれで帰らせていただきます。また改めて伺わせていただきます」岡本茜は歯を食いしばった。林康弘が彼女を受け入れてくれないなら、しつこく粘る必要はない。林康弘は確かに凄い人物だが、日本には林康弘だけではない。師匠を見つけることはそれほど難しくないはずだ!
「ああ、また遊びに来なさい」岡本茜の目に宿る不甘、怒り、屈辱を見逃さなかった林康弘は、慈愛に満ちた様子で手を振り、ゆっくり帰るように促した。
「林おじいさん、さようなら。斎藤お兄さん、時間があったら私の家に遊びに来てください。それとも、お兄さんに会いに行くときに、斎藤お兄さんにも会いに行ってもいいですか?」林康弘のところは諦めたものの、岡本茜は斎藤昇の存在を忘れてはいなかった。