第199章 今日は私が通報する番

「いいえ、うちの団地にそんな人はいないわ」と伊藤佳代は首を振った。「もう一度よく探してみましょう。どこかに押し込まれているかもしれないから」

「うん、早く探そう」この二着の新しい服は、橋本絵里子にとってこれから数日間の重労働を乗り切る原動力のようなものだった。

しかし、母娘で家中を上から下まで隅々まで探し回り、埃まみれになっても、伊藤佳代と橋本絵里子は昨日買ってきたばかりの二着の服の入った袋を見つけることができなかった。「まさか...本当に誰かに持っていかれたの?」長時間探しても新しい服が見つからず、伊藤佳代は疑い始めた。

昨日、家計の権限を手放し、自分の給料から六千円も奈奈に渡されたことで、伊藤佳代はとても腹を立てていた。でも、すでに絵里子の新しい服を買うために千円使っていたことを思い出すと、少し気が楽になった。