第199章 今日は私が通報する番

「いいえ、うちの団地にそんな人はいないわ」と伊藤佳代は首を振った。「もう一度よく探してみましょう。どこかに押し込まれているかもしれないから」

「うん、早く探そう」この二着の新しい服は、橋本絵里子にとってこれから数日間の重労働を乗り切る原動力のようなものだった。

しかし、母娘で家中を上から下まで隅々まで探し回り、埃まみれになっても、伊藤佳代と橋本絵里子は昨日買ってきたばかりの二着の服の入った袋を見つけることができなかった。「まさか...本当に誰かに持っていかれたの?」長時間探しても新しい服が見つからず、伊藤佳代は疑い始めた。

昨日、家計の権限を手放し、自分の給料から六千円も奈奈に渡されたことで、伊藤佳代はとても腹を立てていた。でも、すでに絵里子の新しい服を買うために千円使っていたことを思い出すと、少し気が楽になった。

絵里子の学費は何とかして、やりくりすれば何とか工面できるはずだった。

学費の目処が立ち、絵里子は新しい服を着て学校に行けるはずだった。今学期の始まりは完璧なはずだった。しかし、新しい服が見つからなくなり、すべてが台無しになってしまった。

誰かが橋本家から物を盗むなんて、警察も恐れないのか?!

伊藤佳代が怒って警察を呼ぼうとした時、ちょうど橋本奈奈が外から帰ってきた。

普段なら橋本奈奈など気にも留めず、見るのも嫌だという態度だった伊藤佳代だが、一目見た途端、奈奈から離れかけた視線が再び戻った。「あ、あなた、その新しいワンピースはどこから?それは私があなたのお姉さんに買ってあげたものよ。脱ぎなさい!もう一着はどこ?!」

橋本奈奈が今日着ていた新しいワンピースは、まさに伊藤佳代が橋本絵里子のために買ったはずの、見つからなくなったその一着だった。

「まったく、泥棒が泥棒と言うなんて。昨日はあなたが警察を呼んだけど、今日は私が警察を呼ぶ番よ。こんな小さい年で悪いことをして、お姉さんの物を盗むなんて。今はお父さんがいないから、私がしっかりとお仕置きしてやる!」

「誰が家にいないって?」ちょうどその時に帰宅してきた橋本東祐は顔を冷たくし、細めた目で伊藤佳代の上がった手を見つめた。