橋本東祐の言葉を聞いて、橋本奈奈は胸がドキドキした。
二つの人生で姉妹として生きてきたが、橋本絵里子の心の中には誰がいるのだろうか。橋本絵里子は自分以外の誰のことも気にかけない。父は昨日やっと病院から退院したばかりで、リハビリのことは数日休んでから考えるべきだった。
橋本絵里子が突然父のことを気にかけ始めた。しかも、父は転んでもいないのに、なぜ橋本絵里子は父が転んだから支えに来てほしいと言ったのか?
「どうしたの?」橋本奈奈の顔色が変わるのを見て、橋本東祐は橋本奈奈を引き止めた。「朝早くからそんなに急ぐことがあるの?お姉さんを責めないで。私はただ歩き疲れただけだから、お姉さんが一緒に支えてもらおうと呼んだだけだよ。」
橋本東祐は、橋本絵里子が橋本奈奈の今日の学習計画を乱したから、橋本奈奈の顔色が悪くなり、橋本絵里子に腹を立てているのだと思い、急いで橋本絵里子の弁解をした。
「お父さん、ちょっと用事があって家に戻らないといけないの。ここで少し座っていて、後で迎えに来るから。」橋本奈奈はこれがどういうことなのか説明できなかったが、橋本絵里子がこれほどのことをするのは、きっと目的があるはずだ。
橋本絵里子がこれほど手の込んだことをして、父を利用して自分を騙し出したということは、橋本絵里子の今日のターゲットが自分だということを示している。
今の自分に、橋本絵里子がこれほどの労力を費やす価値があるものとは。
橋本奈奈は慎重に考えた結果、昨日斎藤昇が自分にくれたお金以外に、二つ目の可能性は見つからなかった。
しかし、橋本絵里子はどうやって自分にお金があることを知ったのだろう?
橋本奈奈は多くを考える時間がなく、立ち上がって家に向かって走り出そうとした。
肉まんを買いに行って帰ってこないはずの橋本絵里子が、このタイミングで走り出てきて、橋本奈奈の前に立ちはだかった。「奈奈、どこに行くの?私一人じゃお父さんを支えられないから、二人で送っていこうよ。まだ朝早いし、夏休みだし、家で本ばかり読んで目を痛めないで、一緒に歩こうよ。」
いけない、絶対に橋本奈奈を今帰らせてはいけない。もしお母さんがまだお金を見つけていなかったらどうする。