第197章 折半

どうせ食事も終わったことだし、橋本奈奈は腕を組んで橋本絵里子を冷ややかな目で見つめた。「何を相談するの?」

「パパが奈奈は英語が得意だって言ってたわ。もし私に能力がないなら、誰かに教えてもらっても難しいでしょう?こうしない?この資料を私が先に翻訳して、間違ってたり訳せなかったところを直してもらうの。そうしたら、お金は半分ずつにしましょう。どう?」

伊藤佳代は口をもぐもぐさせ、橋本絵里子の言葉に不満そうだった。

資料の内容は絵里子が翻訳して、橋本奈奈はただ直すだけなのに、給料を半分も取るなんて、厚かましすぎるんじゃないの?

でも今日、伊藤佳代は橋本東祐にひどく叱られたばかりで、橋本東祐が「離婚」という言葉まで出したことを思い出すと、普段は大砲のように口うるさい彼女も、この時ばかりは固く口を閉ざし、余計な一言も言う勇気がなかった。

伊藤佳代が何を考えているか、橋本奈奈は足の指で考えても分かるくらいだった。だから伊藤佳代を見ずに、橋本東祐だけを見つめた。

橋本東祐が平然とした表情で、何の反応も示さないのを見て、橋本奈奈はほっとした。これは前にパパと話したことが無駄じゃなかったということだろう。

以前なら、パパはすぐに彼女の代わりに承諾して、橋本絵里子と仲良くするように、橋本絵里子をよく手伝うようにと言い聞かせただろう。

結局、橋本絵里子の言葉も、ある意味「向上心」「進歩」の表れだったのだから。

「奈奈、どう?いいでしょう?」橋本絵里子は笑みを浮かべながら橋本奈奈を見つめ、春雨のように優しい口調で話しかけた。しかし橋本奈奈はその春雨の下に潜む寒さを感じ取っていた。

「だめ」橋本奈奈は水を一口飲んで言った。「見下げているわけじゃないけど、この仕事、あなたにはできないわ」

橋本絵里子は英語が大嫌いだった。彼女がこの資料を持ち出したのは、橋本絵里子に諦めてもらいたかっただけなのに、橋本絵里子はかえって厚かましくなった。

もし本当に十六歳だったら、橋本絵里子の計算を理解できなかったかもしれない。でも「四十六歳」近い彼女が、橋本絵里子の言葉の罠を見抜けないはずがない。