第196話 相談したい

「はい」橋本東祐の緊張した気持ちは一気に和らいだ。「奈奈、安心して。今日から、パパは本当の良いパパになるよ」

今日、橋本東祐に平手打ちされた伊藤佳代は、ようやく本当に大人しくなった。彼女は橋本絵里子と二人で、おとなしく橋本奈奈の部屋を片付けた後、すぐに食事の支度をした。「橋本さん、ご飯できましたよ。食べますか?」

伊藤佳代を見ただけで、橋本東祐の表情は急に冷たくなった。顔を奈奈の方に向け、声を落として、少し愛情を込めて言った。「奈奈、晩ご飯食べに来なさい」

橋本東祐のこの表情に、その場にいた他の二人の女性の顔色が一斉に変わった。

伊藤佳代は腹が立って仕方がなく、橋本絵里子の表情はより陰鬱になった。

どうして彼女には、この六千円を使えなかっただけでなく、かえってパパが奈奈により偏ってしまったように感じるのだろう?一体どこで間違えたのか、パパの奈奈に対する態度がこんなに大きく変わってしまったのか?

「橋本さん、絵里子の学費のことですが...」座って、伊藤佳代は勇気を出して橋本東祐に尋ねた。

「お母さん、まだ半月あるから、私がアルバイトを探してみるわ。稼げるだけ稼ぐわ」橋本絵里子は深く息を吸って言った。「奈奈、夏休み中ずっとパパの面倒を見てたのに、六千円も稼げたなんて、パパより給料が高いじゃない。奈奈、そんな良い仕事、私にも紹介してよ。たくさん稼げたら、学費を払えるだけじゃなくて、パパの医療費も一緒に返せるでしょ。そういえば奈奈、パパの医療費、誰から借りたの?教えてくれてなかったよね?」

彼女は不思議に思った。奈奈には白洲隆以外に友達がいないはずなのに、どうやって四万円もの大金を借りられただけでなく、短い夏休みの間に六千円も稼げたのだろう。

「奈奈、何か後ろめたいことしてるんじゃないでしょうね!」伊藤佳代は目を見開いて、また意地悪な口を開いた。

「さっきの平手打ちは軽すぎたかな?」橋本東祐は本当は女性に手を上げたくなかった。特に二人の娘の前で。しかし伊藤佳代のこの度重なる意地悪で、奈奈の良いところを全く認めようとしない態度に、橋本東祐は思わず箸を取り上げて、伊藤佳代の顔に投げつけそうになった。