第211章 一体誰を見ているのか

橋本奈奈は賢くて、こんなことまで知っているなんて。

そういえば、橋本おじさんも若い頃は軍人だったから、奈奈さんがこんなに経験豊富なのも納得だ。

両親が自分と橋本奈奈を引き合わせようとしているのを考えると、手塚勇の心はむずむずして、甘い気持ちになった。

橋本奈奈は年齢が少し若いだけで、他には何も不都合なところはない。

今回の学生の軍事訓練の任務を自ら志願したことを思い出し、手塚勇は顔が赤くなりそうになった。幸い彼の肌は黒かったので、この太陽の下では普通の人には気付かれないだろう。

橋本東祐のおかげで、橋本奈奈が今年何歳で、どこの高校に通っているかまで、手塚勇は詳しく調べていた。もちろん、手塚のお母さんも一役買っていた。

だから、今年部隊から平泉高校の学生の軍事訓練のために人員を派遣すると聞いた時、手塚勇は自分のために小さな裏口を作った。

近くにいる者が先に月を得るというが、嫁さんは非常に重要なのだ!

手塚勇が意図的に来なければ、学生の軍事訓練のような小さな任務に、手塚軍曹のような連隊長が直接出向くことはありえなかった。部隊には入隊2、3年の若い兵士がたくさんいるのだから。

実際、手塚勇の同行は、入隊2、3年の下級兵士たちの注目を集めていた。彼らは皆不思議に思っていた。こんな小さな軍事訓練の任務なら、軍曹どころか、中尉でさえ来たがらないのに、手塚軍曹は一体何のつもりだろうか?

もしかして、手塚軍曹がこの学校で学生の軍事訓練を行う裏に、別の任務があるのではないか。この高校に何か宝が隠されているのだろうか?

そうなればなるほど、これらの若い兵士たちは手塚勇をより注目するようになり、同じ場所で他のクラスの訓練をしている際に、高校1年1組の様子を密かに観察し続けた。

普段は笑顔を見せず、斎藤中佐の真髄を受け継ぎ、毎年新兵を泣かせる悪魔の手塚軍曹が今日誰かを褒めたと聞いて、他の教官たちは目を丸くし、次の号令を忘れそうになった。

学生の前で恥をかかないように、何人かの教官は急いで言った。「よし、我々も10分休憩!」

一つの「も」という言葉で、彼らの本音が漏れてしまった。

幸い手塚勇は気付かず、高校生たちもこの「も」という言葉の意味を理解していなかった。さもなければ、笑い者になって恥をかいていただろう。