手塚勇の一声で、それまでバラバラに散らばってだらだらしていた1組の生徒たちは、驚いたアヒルのように、両翼をバタつかせながら、最速で自分の位置に集合した。
まあ、この手塚教官はイケメンだけど、すごく怖いわね。
その後の訓練で、手塚勇はより厳しくなり、1組の生徒たちは悲鳴を上げた。
体の弱い女子生徒の一人が耐えきれずに気を失い、クラスメイト二人に保健室へ運ばれた。
「10分休憩」軍事訓練中に、熱中症で倒れる学生は珍しくないが、手塚勇もさすがに譲歩して、生徒たちに休憩を与えた。
「手塚教官は目が利くね。というか運がいいね。あの男子生徒は本当にいい素質だよ。体力も部隊で1年過ごした新兵たちと比べても遜色ないくらいだ」
「そうだね。部隊に引き込めたら、きっといい人材になるだろうな」
他のクラスの二人の教官は、生徒たちの休憩時間を利用して情報交換をしていた。
彼らは手塚勇が以前褒めていた人物が誰なのか気になっていたが、ちょうどその時、白洲隆と橋本奈奈が一緒に座っていた。手塚勇が橋本奈奈の方向をずっと見ていたため、二人の教官は当然のように、手塚勇が見ていたのは橋本奈奈ではなく白洲隆だと思い込んでいた。
観察を続けると、確かに白洲隆の体力は優れているだけでなく、姿勢も非常に正確で、特に先ほどの障害物越えでは、白洲隆のスピードは驚くほど速く、部隊で1、2年訓練を受けた新兵たちよりもさらに速かった。
こんな優秀な人材を見過ごすわけにはいかないだろう。
「明日の射撃訓練で、この生徒はどんな成績を残すと思う?」
「さあ、わからないが、きっと悪くないだろう」
「手塚軍曹が手を出す前に、この人材を自分たちのものにしないか?」
「手塚軍曹から人を奪おうだって?随分と度胸があるな。奪いたければ君が奪えばいい、俺はそんな面倒なことには関わらないよ」もう一人の教官は首を振った。本当に手塚軍曹を怒らせたら、きっと痛い目に遭うだろう。臆病な彼にはそんな危険な真似はできない。