第215章 この言葉は懐かしい

「プッ……」既に嫁いだ姉がいる鈴木香織は今回思わずスープを吹き出してしまった。なぜかその言葉が妙に聞き覚えがあった。以前、姉の旦那が姉を追いかけていた時も、確かこんなことを言っていたような気がする！

「香織！」河野雲見は顔を覆いたくなった。恥ずかしすぎる。

「すみません、むせちゃって、我慢できなくて」鈴木香織は茶碗を置いた。手塚教官が帰るまでは絶対に口に何も入れないと決心した。命取りになりそうだった。

「ありがとう、手塚教官。でも今は大丈夫です」橋本奈奈は首を振って笑いながら手塚勇の申し出を断った。実際、今は他人の助けは必要なかった。

翻訳で稼げるし、大学に進学しても、学費は自分で何とかできるはずだった。もう家族に負担をかけることはないだろう。

「これが私の家の住所だ。時間があったら、母に手紙を書いてやってくれ。母さんはよくお前のことを話題にしているんだ」手塚勇は予め用意していたメモを取り出し、橋本奈奈に渡した。手塚のお母さんを盾にして、手塚勇は厚かましくも今日の主な目的を達成した。

「はい」橋本奈奈は手塚家の住所を大切にしまったが、心の中では手塚おばさんが字を読めるのかと不思議に思っていた。

一方、なかなか帰ろうとしなかった白井照子と井上雨子は、この光景を見て複雑な気持ちになった。「橋本奈奈が手塚教官を知っていて、しかも手塚教官とそんなに仲が良いなんて聞いてなかったわ。橋本奈奈と手塚教官って、どういう関係なの？！」

「知るわけないでしょ！」井上雨子は怒って答えた。「私は橋本奈奈の母親じゃないんだから、橋本奈奈のことを全部知っているわけないでしょ」

「もしかして親戚？」もしそうだとしたら、以前橋本奈奈と三浦玲子たちの関係を悪くしようとした件が橋本奈奈に知られたら、きっと手塚教官に自分の悪口を言うに違いない。だから手塚教官が自分にあんな態度を取るのも納得だ。

「そうは見えないわ。橋本奈奈の家にそんな親戚がいるなんて聞いたことないわ」井上雨子は憂鬱でたまらなかった。もし手塚教官が本当に橋本奈奈の親戚だったら、この半月は橋本奈奈の機嫌を伺わなければならないことになる。

橋本奈奈の機嫌を損ねたら、手塚教官が橋本奈奈のために自分をいじめるかもしれない！

どうして手塚教官は自分の親戚じゃないのだろう？