第225章 絶対に盗んだもの

「だから奈奈が斎藤家に物を置いていったって言うの?」伊藤佳代は驚いた。「あの奈奈ったら、口が重くて、人に会っても挨拶もできないような子が、斎藤家の人と知り合いになれるはずがないわ!」

斎藤家のような家柄なら、たとえ親しみやすい人たちだとしても、絵里子のような利発で賢い子供としか付き合わないはず。奈奈とそこまで親しくなるはずがない。

「お母さん、お父さんか、おじいちゃんが斎藤家と何か関係があって、奈奈がそれを知って、勝手に近づいたんじゃない?」もしそうなら大変だ。奈奈も橋本姓だし、おじいちゃんが築いた縁を奈奈一人に独占されるわけにはいかない。

「そんなはずないでしょう。斎藤家は木下家とは違うのよ。木下家の人たちでさえ、斎藤家の人に会えば、恭しく元総長様とか、お兄様とか呼ぶのよ。もしおじいちゃんがそんな偉い人と知り合いだったら、お父さんが奈奈を産んだばかりに兵隊にもなれなかったりしないわ」彼女はそんな立派な義父がいればいいのにと思ったが、残念ながらいない!