「そうだ、鍵だ、鍵!私ったら忘れてた!」事態が失敗に終わりそうになって、伊藤佳代は自分の太ももを叩き、それから勢いよく橋本奈奈に向かって突進した。「鍵を出しなさい!」
先ほどは人違いをしていたので、白洲恵美子が持っていた鍵で斎藤家の裏門が開かなかったのは当然だった。でも今、橋本奈奈が出てきた以上、彼女が持っている鍵は間違いないはずだ。彼女は確信していた。橋本奈奈が行ったのは斎藤家で、持っているのは斎藤家の鍵に違いない。
「ちょっと、何するの?人を疑って、今度は喧嘩するつもり?」白洲恵美子は様子がおかしいと感じ、橋本奈奈の前に立ちはだかった。
橋本奈奈は従兄から守るように言われた人だ。もし彼女の目の前で誰かに虐められたら、白洲恵美子の顔が立たない。
「あなたには関係ないでしょ!」橋本絵里子は白洲恵美子を抱きとめた。伊藤佳代が橋本奈奈の身体を探るのを邪魔されたくなかったからだ。