白井照子は好奇心に駆られて紙くずを拾い上げ、広げてみると、力強い男性の文字が目に飛び込んできた。
内容はとてもシンプルで、ある大学の住所と、学部と学年が書かれていた。
これは先輩の連絡先なのかしら?
でも、誰が渡してくれたのだろう?
白井照子は赤い唇を固く結び、先輩からのものではないはずだと考えた。もし先輩からのものなら、今になって見つけるはずがない。つまり、教室の誰かが渡してくれたということ?
紙くずの文字は四角く力強く、明らかに男子の字だった。女子の字ではありえない。白井照子は直感的に、この紙くずの文字は間違いなく田中勇が書いたものだと思った。
「……」白井照子は歯ぎしりをしながら橋本奈奈の方を見たが、橋本奈奈は頭を下げて真剣に本を読んでおり、まったく自分を見ていなかった。