第279章 断じて容赦せず(加更)

人の噂なんて怖くないが、戸川先生のような、クラスで決定的な影響力を持つ人が、突然頭がおかしくなったら、それこそ命取りだ。

戸川先生の言葉はクラスの生徒たちに大きな影響を与えていた。橋本奈奈と同じ寮室の生徒以外は、やっと橋本奈奈に対する態度が変わってきたのに、ここ数日また気まずい雰囲気になってきた。

学業成績がよくても意味がない、人としての善さが大切なのだ。

自分の品性や道徳がどうであれ、この世には狂信者が絶えることはなく、他人に厳しく自分に甘い人は至る所にいる。

みんなの橋本奈奈を見る目が和らいできた時、唯二人だけが例外だった。それは白井照子と井上雨子だった。

白井照子と井上雨子は暗黙の了解で視線を交わした。せっかく橋本奈奈のクラスでのイメージを崩すことができたのに、戸川先生の数言で、これまでの努力が全て水の泡になってしまった。