校長は橋本絵里子の成績を見て、やはり電話で確認してみると、目の前にある成績表と全く同じ結果だった。
皆高校の教師なので、付属高校の合格ラインがどれほどか、校長が知らないはずがない。付属高校の合格ラインは平泉高校よりもずっと高く、橋本絵里子のこの成績では付属高校の生徒になることは不可能なはずだった。
そうなると説明は一つしかない。きっと橋本家が大金を出して、橋本絵里子を付属高校に入れたのだ。
橋本家が橋本絵里子を付属高校に通わせるためにそれほどの大金を出せるということは、橋本家の経済状況は噂で言われているほど困難ではないということを意味する。そうなると、橋本奈奈の両親が彼女のために学校の近くに小さな部屋を借りたことは、家計を圧迫しているとは言えないだろう。
校長は確信していた。橋本奈奈の学校近くの部屋を3年間借りても、橋本絵里子が付属高校に通うための「寄付金」の半分にも満たないだろうと。
こうなると、噂の中で橋本奈奈を最も傷つけていた一つの点が、すぐに成り立たなくなった。
一つの環境的証拠は、百の噂よりもずっと信頼できるものだ。
伊藤佳代は全く予想していなかった。彼女が苦労して平泉高校で橋本奈奈に不利な風を起こしたのに、橋本絵里子への偏愛のせいで、その風の目がすぐに散らされてしまった。風の目が散ると、たった今まで激しく吹いていた疾風が、一瞬にして跡形もなく消えてしまった。
「生徒の保護者の行為について、教師として、あまり多くを語りたくありません。しかし実際には、他の家庭は男尊女卑ですが、橋本家は年上を重んじ年下を軽んじています。校長先生、資料はたくさんありますが、私は昨日それを見て、一晩中怒りで眠れませんでした。このような母親が本当にいるとは信じられません。自分の実の娘にこのようなことをするなんて。この証拠が目の前になければ、おそらく誰もこんなことが世の中にあるとは信じないでしょう。これも自分の立場を利用して、このように傲慢に振る舞い、学校の人々に自分の生徒を冤罪に陥れるところでした。校長先生、橋本奈奈の当時の成績なら、付属高校に通っても、そこまで待遇が悪くなることはなかったはずです。」
戸川先生は深いため息をつき、資料の内容を思い出すと、まだ肝が痛むようだった。