第272章 他人の子供

橋本東祐は歩みを緩め、できるだけ普通に見えるように歩こうとしたが、そうやって歩くのは非常に辛かった。

橋本東祐が苦労して橋本奈奈の教室にたどり着いた時には、汗びっしょりだった。「お父さん、来てくれたんだ!」橋本東祐が教室の入り口に着くと、白洲隆が橋本奈奈を軽く押し、橋本奈奈はすぐに橋本東祐を見つけ、彼を支えに行った。「お父さん、どうしてこんなに汗をかいているの?今はそんなに暑くないのに。」

橋本東祐は教室に他の生徒の保護者がいたため、とても気まずかった。「お前、支える必要はない。自分で歩けるから。」

「いいじゃない、お父さん、無理しないでよ。」なるほど、お父さんがこんなに汗をかいていたのはこういう理由だったのか。「お父さん、気にしないで。怪我しているだけだから、そのうち良くなるよ。」

「でも、お前に恥をかかせたくないんだ。」橋本東祐は慰めるような、でも諦めたような口調で言った。他の保護者は皆普通なのに、自分だけが足を引きずって歩いているのは良くない。

「何が恥ずかしいの、お父さん、考えすぎよ。」橋本奈奈は目を転がした。これのどこが恥ずかしいのか。「怪我しているだけじゃなくて、本当に足が不自由になったとしても、恥ずかしいことじゃないわ。お父さん、座って。お水を持ってくるから、それと、汗を拭いて。」

橋本奈奈は自分のハンカチを橋本東祐に渡し、コップを持って水を注ぎに行った。

橋本奈奈の清潔で、レース付きの小さなハンカチを見て、橋本東祐は大の男が特に気恥ずかしく、使うのを躊躇した。奈奈のハンカチを汚したくなかった。

「お父さん、お水飲んで。どうして汗を拭かないの?」

「いらない。」橋本東祐は水を受け取り、一口飲むと、喉がすぐにだいぶ楽になった。「そんなに汗かいてないから、すぐ乾くよ。ハンカチは自分で持っておきなさい。汚さないように。」

「お父さん、何言ってるの。ハンカチが汚れないわけないじゃない。汚れたら洗えばいいの。早く拭いて。顔が赤くなってるわ。誰が無理しろって言ったの。」橋本奈奈は顔をしかめた。「お父さん、正直に言って。そんな歩き方でどのくらい歩いたの?足は痛くない?やっと良くなってきた足をまた悪くしちゃだめよ。」