第276章 正体

「奈奈、私は不思議に思うんだけど、あなたは私たちと違って、普段から寮で夜遅くまで勉強することもないのに、なぜ懐中電灯を買うの?お父さんのことを本当に大切にしているのね」唐澤夢子は橋本奈奈の肩に触れながら、羨ましそうな口調で言った。「奈奈、お父さんはきっとあなたのことをとても大切にしているでしょう?」

「そうね、お父さんがいなかったら、私はここまで大きくなれなかったわ」

「そういう意味じゃないの。さっき井上雨子がクラスで言ったことは、作り話なんでしょう?」唐澤夢子は天然に心の疑問を口にした。三浦玲子は顔色を変え、唐澤夢子の口を押さえようとしたが間に合わなかった。

三浦玲子は唐澤夢子を睨みつけた。本当に余計なことを言うなんて、バカなの?

唐澤夢子は気にせずに言った。「何よ、奈奈とお父さんの仲はとても良いじゃない。明らかに井上雨子の話は嘘よ」彼女は本当にバカじゃない。もし橋本おじさんが奈奈にそんなに酷いなら、奈奈が橋本おじさんにあんなに懐くはずがない?

彼女はそんなの信じない。

奈奈とルームメイトになって半学期、他のことは分からないけど、新しい服は確かに多くないけど、人のお下がりばかり着ているわけでもない。

「もういいわ、みんな黙って。先生が出した宿題は少なくないから、早く終わらせましょう。もうすぐ寮に戻る時間よ」鈴木香織は唐澤夢子の天然な発言を遮った。もし井上雨子の話が本当に嘘だったら、あの時の橋本おじさんの反応はあんな風にはならなかったはず。

「そうよ、私はまだ5枚のテスト用紙が残ってるの。死にそう、死にそう」唐澤夢子は焦って飛び跳ねた。高校に入ってから、唐澤夢子は毎日どれだけの練習問題をこなしているのか、もう覚えていないほどだった。

とにかく、手元の練習用紙は机に収まりきらないほど多くて、一部を寮に持って行かなければならなくなっていた。

「戻りましょう、私もまだ3枚残ってるから」河野雲見は先に教室に入った。

この保護者会のおかげで、1組のクラスメート間の関係は少し和やかになったようで、特にクラスの人々の橋本奈奈に対する態度が変わった。

リラックスした学習環境は、橋本奈奈にとってもちろん良いことだった。

しかし半日も経たないうちに、橋本奈奈たちは別の奇妙なことに気付いた。