「あなた……」橋本絵里子は歯を食いしばり、怒りで言葉を失った。
もし橋本奈奈がまだ橋本絵里子と対峙する気があれば、橋本絵里子は奈奈を説得して、橋本東祐に全てが誤解だと分からせる自信があった。しかし今や橋本奈奈は橋本絵里子と道理を語ることさえ拒み、面と向かって是非を論じることもせず、橋本絵里子に全ての責任を押し付けている。これでは橋本絵里子がどんなに多くの対処法を持っていても、それを実行する余地はなかった。
「何も言わないなら部屋に入りなさい」橋本奈奈は冷ややかに橋本絵里子を一瞥した。前世では橋本絵里子に一生道理を説かれ、一生損をさせられた。今世では、もう橋本絵里子と「道理」を語るつもりはない。そんなことをしたら、自分はただの馬鹿になってしまう!
「奈奈、絵里子とどんな話をしていたの?部屋に入ったばかりだけど、寒くない?」橋本奈奈が懐かしくも見知らぬ家に入るや否や、橋本東祐は彼女の手に温かいお茶を握らせた。