第326章 対質しよう

父親が奈奈を連れて帰ってこない日は、彼女と母親は尻尾を巻いて大人しくしていなければならなかった。

橋本絵里子は他のことは心配していなかったが、伊藤佳代が自分の性格のままに、品のない、奈奈の気を損ねるようなことをするのではないかと心配だった。結局、奈奈を困らせることなく、むしろ父親が奈奈のために出て行ってしまった。

「そんなことないわ」伊藤佳代は少し心虚そうに答えた。「明日はいい天気になりそうだから、私はもう計画を立てているの。奈奈の部屋の布団や敷布団を全部出して干して、洗って、ついでに部屋の埃も拭くつもり。あの生意気な娘ったら、私が何もしていないのに、もう橋本さんの前で私の悪口を言うのよ。もし私が何か不十分なことをしたら、きっと橋本さんの前で私を中傷するに違いないわ。私は、そんな機会は与えないわ。」

橋本絵里子は満足そうに微笑んで、それから眉をひそめた。「お母さん、そう考えてくれるのは、もちろん一番いいことよ。でもお母さん、今の言葉は本心と逆のことを言っているんじゃないの？」

「もう12時よ、一日中忙しくて疲れたわ。絵里子、早く寝なさい。私も寝るわ。」伊藤佳代はほとんど答えられなかった。

伊藤佳代が今言ったことは、確かに考えていたが、実行する気など全くなかった。

奈奈が橋本さんを唆して引っ越しさせたのだから、清潔で暖かい布団が欲しければ、自分で干せばいい。彼女を傷つけるときは、自分が実の母親だということも考えず、必要なときは奈奈は自分を使用人のように扱う。そんな奈奈に仕えるわけがない、甘い考えすぎよ。

伊藤佳代にはこの程度の小細工しかできず、大きな波風は立てられなかった。

「まったく...」伊藤佳代のこの回避的な態度を見て、橋本絵里子は呆れた。やはり母は先ほど本心と逆のことを言っていて、奈奈を無視して、奈奈が帰ってきたら自分で部屋を片付けさせるつもりだったのだ。

今日彼女が余計な一言を聞いておいて良かった。そうでなければ、母がまた失敗して、奈奈に問題を起こす口実を与えてしまうところだった。

「橋本さん、奈奈、お帰りなさい。早く中に入って、お茶を入れますよ。今沸かしたばかりです。」大晦日の日、橋本東祐は奈奈を連れて、午後1時には到着した。橋本東祐を見て、伊藤佳代は喜色満面で、熱心に出迎えた。