第325章 "団欒"の年を過ごす

お金以外に、何が彼女の父親をこんなに困らせる表情にさせるのだろうか？

「お母さんが言うには、みんな家族なんだから、お正月はみんなで団欒しないといけないって。今年の中秋節は、家族全員で同じテーブルを囲んで食事する機会がなかったからね。奈奈、これについてどう思う？」橋本東祐は困惑していたものの、この団欒の食事は彼も望んでいた。

彼は伊藤佳代と離婚していないし、伊藤佳代は彼の妻で、橋本絵里子は彼の娘だ。たとえ本当に離婚したとしても、家族が年に一度、一緒に食事をするのは、そんなに無理な話ではないだろう。

「お父さん、実はあなたも望んでいるんでしょう？」橋本奈奈は口角を少し上げて「お父さんも望むなら、私は何も意見はないわ。橋本の中庭で食べるの？それともここで？」

「橋本の中庭に戻ろう」この家は平泉高校が彼らに貸してくれているものだ。伊藤佳代がしてきたことを考えると、橋本東祐は厚かましくても、この食事をどんなに望んでも、この「家」で食事をするわけにはいかないと思った。

「じゃあ、そうしましょう」橋本奈奈は頷いて、すぐに承諾した。

「奈奈、嫌じゃないか？」橋本奈奈がすぐに承諾した態度に、橋本東祐は大いに驚いた。彼は奈奈が嫌がって、承諾しないだろうと思っていたのだ。

まさか、奈奈を説得するために考えていた言葉が、一言も使う必要がないとは。

やはり、家族の中で奈奈が一番分別があって、一番素直で、何も心配する必要がない。

橋本奈奈は振り向いて、とても淡々と言った。「別に嫌じゃないわ」ただの食事じゃない。

「嫌じゃないならよかった。今年のお正月は、みんなでいい食事をしよう。奈奈、安心して、お父さんがいるから、お母さんは…」橋本東祐は喜びの笑みを浮かべた。

「お父さん、分かってるわ」橋本奈奈は橋本東祐の言葉を遮った。彼女の母は何をしないって？母がどんなに大人しくても、それは数日しか続かない。そうでなければ、以前学校であんな大騒ぎを起こして、彼女が平泉高校で勉強を続けられなくなるところだった。

斎藤お兄さんの助けがなければ、とっくに母のせいで転校していただろう。