第308章 前途暗い

「なんてこった、今日は一体どういうことだ?」

「奈奈……あれ、ドアが開いてるじゃないか?」手に絞めた鶏を持って帰ってきた橋本東祐がドアを押すと、家の玄関が全く閉まっていないことに気づいた。「奈奈、どうしてドアを閉めなかったの?誰か来たの?」

「お父さん、やっと帰ってきた!」橋本奈奈は驚いて急いで前に走り、橋本東祐の手を強く握った。

「どうしたんだ?驚いて顔が真っ青だぞ。一体誰が来たんだ?」橋本奈奈の様子がおかしいのを見て、橋本東祐は手を離して鶏を落とし、橋本奈奈を上から下まで見た。

「別に、何でもないの。」橋本奈奈は苦笑いを浮かべた。精神分裂症のような野村おばさんを見て驚いたとは言えなかった。野村おばさんは一体どうしたんだろう。今度斎藤お兄さんか斎藤さんに会ったら、言うべきかどうか。「お父さん、鶏を落としちゃったよ。私の栄養補給用に買ってきてくれた鶏なの?」

「そうだよ、お前の分と姉さんの分、さっきお前に驚かされたからな。」橋本東祐は急いで鶏を拾い上げた。「洗って綺麗にしてから、後でスープを作るよ。お姉さんのは若鶏で、お前のは老鶏だ。」

「お母さん、いいの?」違いを聞いて、橋本奈奈は笑った。同じ鶏でも、老鶏は若鶏よりずっと高いのだ。

「俺の金だ、あいつに関係ないだろう。」橋本東祐は気にせずに鼻を鳴らした。「どうして家にこんなに物が増えてるんだ?」

「さっき斎藤お兄さんと斎藤さんが来て、全部持ってきてくれたの。」

「あの人たちが来たのか。奈奈、お前も…」橋本東祐は橋本奈奈の分別のなさを叱ろうとした。斎藤昇にあれだけの借金があるのに、斎藤昇が珍しく部隊から帰ってきたのだから、彼らが物を持って斎藤昇を訪ねるべきなのに、どうして斎藤昇の物を受け取るのか。

しかし、斎藤昇はもう大人で、奈奈はまだ子供だと考えると、斎藤昇が贈りたいと言えば、奈奈に断る術があっただろうか?

斎藤昇の威厳を思い出すと、橋本東祐は呆然として、たとえ自分がその場にいても、断れなかったかもしれないと気づいた。それなら奈奈を責める資格なんてない。