第337章 橋本奈奈、話がある

幸せの中にいながら幸せを知らない、まさにこの不肖の息子のことだ。

話は二つに分かれ、斎藤家では不愉快な朝食を済ませたが、橋本奈奈は斎藤昇が用意した愛情たっぷりの朝食を一人で楽しく食べていた。お腹が温かいだけでなく、何より心も温かかった。

「コンコンコン……」

外から激しいノックの音が聞こえ、橋本奈奈は暖かい布団を後にして立ち上がった。「お父さん?野村おばさん?」

橋本奈奈は、父親が目を覚まして、彼女が橋本の中庭にいないことに気づいて戻ってきたのかと思った。しかし、元旦の朝早くに自分の家の門を叩いている人が、野村涼子という司令官夫人だとは、どうしても想像できなかった。

元旦には、多くの人が斎藤家の門前に集まり、司令官と司令官夫人に新年の挨拶をしようと待ち構えているはずだった。