第337章 橋本奈奈、話がある

幸せの中にいながら幸せを知らない、まさにこの不肖の息子のことだ。

話は二つに分かれ、斎藤家では不愉快な朝食を済ませたが、橋本奈奈は斎藤昇が用意した愛情たっぷりの朝食を一人で楽しく食べていた。お腹が温かいだけでなく、何より心も温かかった。

「コンコンコン……」

外から激しいノックの音が聞こえ、橋本奈奈は暖かい布団を後にして立ち上がった。「お父さん?野村おばさん?」

橋本奈奈は、父親が目を覚まして、彼女が橋本の中庭にいないことに気づいて戻ってきたのかと思った。しかし、元旦の朝早くに自分の家の門を叩いている人が、野村涼子という司令官夫人だとは、どうしても想像できなかった。

元旦には、多くの人が斎藤家の門前に集まり、司令官と司令官夫人に新年の挨拶をしようと待ち構えているはずだった。

斎藤家は今頃人でいっぱいのはずなのに、女主人である野村おばさんがなぜ彼女の家に来たのだろう?

「野、野村おばさん、どうしてここに?」息子が大晦日に家にいないで自分の世話をし、たくさんの洗濯までしてくれたことを思うと、橋本奈奈は心が痛んだ。

野村おばさんに何か気づかれたのだろうか?

野村涼子の自分に対する印象が良くないことを考えると、橋本奈奈は頭が痛くなった。だから今日、野村おばさんが元旦を選んで彼女の家に来たのは、彼女を警告して斎藤お兄さんから離れるように言うためだろうか?

「さっきまではちゃんと話せていたのに、年が明けたら吃音になったの?」野村涼子は目を赤くして、かなり強い口調で言った。

野村涼子のその口調を聞いて、橋本奈奈はさらに心配になった。「あの……まずは中に入って座って、ゆっくり話しませんか。」

斎藤お兄さんと付き合うことを承諾してまだ数時間も経っていないのに、二人の関係がばれて強制的に別れさせられるなんて、この新年は憂鬱だ。

「何、私を家に入れたくないの?」野村涼子は言ってから、少し申し訳なさそうに口元を引き締めた。自分が橋本奈奈に八つ当たりしていることに気づき、すぐに口調を和らげた。「外は寒いし、あなたの顔色もよくないわ。早く一緒に中に入りましょう。」

「はい。」橋本奈奈はドアを閉め、まるで若妻のように大人しく野村涼子の後ろについて行った。

「座って。」

「はい。」

「聞きたいことがあるの。正直に答えてね。」